2022年12月4日
不動産学部2年 梅林佳暖

0.はじめに

山形県上山市では、かみのやま温泉駅の東側の地域で、工場などの跡地に大規模な住宅地・商業地の開発計画が進められています。開発地は3つのゾーンに分かれていて、Aゾーンに住宅地をつくる計画から進められます。Aゾーンでは、住宅地の中につくられる公園緑地を先行してデザインし、その公園緑地にあわせて住宅地を計画する予定です。公園緑地のデザインは、地元住民や、関心のある市民などが参加するワークショップ形式で検討が行われます。上山市では、「パークデザインミーティング」と呼んでいます。パークデザインミーティングは、2022年12月から翌年2月にかけて、4回の実施が予定されています。
明海大学と上山市は、「空家等・空き地の活用に関する地域づくり連携協定」を締結しており、今回、私はパークデザインミーティングの第1回(2022年11月27日開催)に参加する機会を得ました。
ここでは、上山市やパークデザインミーティングの状況について報告します。

1.上山市の状況、問題点

山形県上山市は山形県南東部、蔵王連峰の麓に位置します。市の総面積は約240㎢、人口は約30000人です(2022年時点)。市の中心部に「かみのやま温泉駅」があり山形新幹線も通っています。また上山城もあり武家屋敷通りや寺子屋などの歴史的建造物や、開湯560年の温泉街があります。
しかし、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」によれば、2040年の人口予想では約20000人にまで減少すると推計されています。
温泉街は主要産業ですが、宿泊客が減り廃業したホテルの跡地が空き家となっています。人口減少と超高齢化、温泉街の衰退化などの問題があります。

2.かみのやまランドバンクの取り組み

温泉街は、かみのやま温泉駅の西側に位置します。温泉街では、「NPO法人かみのやまランドバンク」という民間団体が、空き家や空き地の解消と、地域の再活性化に向けて取り組んでいます。かみのやまランドバンクは、中心市街地における空き家・空き地増加がもたらす空洞化をチャンスと捉え、歴史ある蔵や武家屋敷の街並みを生かしながら居住空間を改善し、良好な街づくりを支援するNPO法人です。
空き家や空き家になってしまいそうな建物の所有者の相談にのり、空き家バンク登録物件の情報を基に寄り添います。また、中心市街地を中心に上山市が土地の寄付を受け入れ、かみのやまランドバンクが空き地を地域活性化のための公共用地として整備をしています。さらに、土地の価値を高め、事業の採算性や買い手・借り手を全国から確保する取り組みにも挑戦しています。

3.駅東エリア

駅東エリアは、温泉街ではなく、これまで大きな工場があり、農地、住宅地が混在するエリアでした。目の前に蔵王連峰や三吉山があり、電線も地中化しているため景観が良い場所です。山形新幹線の停車駅(かみのやま温泉駅)に隣接しているので立地がとても魅力的です。周辺には工場が撤退したことでまとまった低未利用地が発生しました。線路に沿って空き地があるため、新幹線に乗っている人からもよく見えるエリアでもあります。現在、エリアの一番端に長清水公園があり、遊具などで子どもが楽しめるようになっています。

エリアA
駅東エリアAゾーン(筆者撮影)

4.駅東エリア整備基本構想

駅東エリアの開発については、明海大学不動産学部の小杉学先生協力のもと、上山市が整備基本構想を策定しています。そこでは、駅東エリアでまとまった開発が可能な低未利用地として、蔵王食品跡地を中心としたAゾーンを住宅エリア、駅東口のBゾーンを公共エリア、太平洋セメント跡地と須川西側のCゾーンを商業エリアとしています。
基本構想では、宅地開発で人口を増やし、維持していくことで人が集う街にしていくために住んでみたいと思わせる「魅力」を作り続けることを重要視しています。そして、その魅力は、地域住民による魅力の創出や、魅力を最大限生かしていくことによって、魅力が大きくなり、持続的に発展していきます。

各ゾーン
駅東エリアの3ゾーン(かみのやま温泉駅東エリア整備基本構想より)

5.パークデザインミーティング

パークデザインミーティングは、市民が公園でしたいことなどの意見やアイデアを計画に反映することを目的として基本的にはワークショップ形式で行われます。ワークショップとは、参加者が5〜10名程度のグループに分かれ、テーブルの上で付箋を使って意見をまとめながら、計画に反映させたいアイデアを提案していくという取り組みです。
しかし、第1回目である今回は、ワークショップではなく、公園緑地計画や、パークデザインミーティングについての説明会でした。参加者は、まちづくりコンサルタントの「ワークヴィジョンズ」から、まちづくりの進め方について説明を受けました。

6.第1回パークデザインミーティングの要点

公園の設計に携わっていただくワークヴィジョンズ代表の西村氏は、「公共空間の使い方が変われば街が変わる⁉」の説明の中で3つ重要なことをあげていました。

1つ目は、公園を作る側の目線ではなく、使う側の目線を大事にしていくこと。公園で何ができたら嬉しいか、想像や妄想をして近い将来の自分の暮らしを豊かにするために、ワークショップ(パークデザインミーティング)を活用できると言っていました。「見かけだけ良くても廃れてしまうため、外観よりも市民をどれだけワクワクさせられるか中身が重要」とワークショップの意義をわかりやすく説明していました。

2つ目は、様々な世代の意見。今回、高校生や大学生が参加していることについて、様々な世代が集まっていてとても良いことであると言っていました。そしてそれは、「まちづくりのバトンを受け取るのは子どもたち」の言葉通り、世代を超えたまちづくりの共有が可能となり、何十年先まで活用できる公園緑地をつくることの第一歩になっていると言っていました。

3つ目は「企画・運営チーム」、「活動チーム」、「ファンチーム」、3つのチームで検討すること。3つのチームを作ることで、できあがった公園がうまく循環します。ワークショップに来た人は、自分がどの立場になるのかワークショップに参加していく中で考えてほしいと言っていました。公園での楽しい取り組みを企画・運営していくのか、公園でテナントやマルシェを出店したいという活動チームなのか、公園を利用して輪を広げていくファンチームなのか。それを意識して残り3回のワークショップに参加してほしいと伝えていました。

7.おわりに

前例があまりないことをしているため、市民の方にわかりやすく伝わるように、かつ意見を出しやすい空気づくりを意識してワークショップを開催していくことが重要なのではないかと感じました。第1回目だったということもあり、西村氏の講話を聴くことで、最初の構想の準備段階を理解しやすくなり、第2回目で「これやってみたい」などの素直な意見が出せるワークショップが開催できるのではないかと思いました。 また、西村氏の「まちづくりのバトンを受け取るのは子供たち」という話のときに、「価値がない土地をもらっても嬉しくないでしょう?」との問いかけに賛同している高校生たちを見て、若い世代もまちづくりに意欲的になっていかないと、未来は明るくならないのだと強く感じました。