2023年1月22日
不動産学部2年 梅林佳暖

0.はじめに

ここでは、前回の報告よりも詳しい駅東エリアの紹介と、第2回パークデザインミーティングの状況について報告します。

1.駅東エリア

(1)概要

駅東エリア全体は面積約30ha、東京ドーム(約4.7ha)の約6.4個分に値する広さです。目の前に蔵王連峰や三吉山が眺められます。山形新幹線が停車するかみのやま温泉駅に隣接しています。周辺には工場が撤退したことで、まとまった低未利用地が発生しています。線路に沿って空き地があるため、新幹線に乗っている人からもよく見えるエリアです。駅東エリアには既存宅地もありますので、まとまった開発が可能な丁未利用地は、以下紹介するA〜Cの3つのゾーンとなります。

3つのゾーン

(2)Aゾーン

今回の、パークデザインミーティングの対象ゾーンです。

駅東エリアでまとまった開発が可能な低未利用地として存在し、面積は約3.2ha。蔵王食品という製菓工場跡地と長谷川製糸場という製糸工場の跡地を中心としたAゾーンを、住宅エリアとして開発する予定です。

線路に沿ってAゾーンがあるため、新幹線に乗っている人からもよく見えるエリアです。

現在、エリアの一番端に長清水公園があり、遊具などで子供も楽しめるようになっています。小学校が近くにあり、駅東エリアでは他に大きな公園がないため貴重な地域の資源といます。長清水公園の脇には、新幹線を渡るための自動車専用高架道路があります。その下は、街灯がないため夜歩くのは危険と考えられます。

(3)Bゾーン

太平洋セメントの工場跡地であり、面積は約0.6ha。現在は太平洋セメントグループの不動産会社である、太平洋不動産株式会社が所有しています。Bゾーンに隣接して空き家が点在しているエリアがあります。人が住んでいない住宅は、そのことが見てわかるぐらい外壁に穴が開いていました。

(4)Cゾーン

須川の西側にあり、現在は農地となっています。面積は約1.7ha。

2.第2回パークデザインミーティング

(1)参加者と進め方

前回は、ワークショップを企画運営するワークヴィジョンズの西村さんと田村さんからのまちづくりの進め方講話でした。そのため、グループに分かれて行うワークショップは今回が初回となりました。今回の参加者は総勢50名。高校生や大学生子育て世代や高齢者、様々な年代が集まっていました。明海大学からは3人の学生が参加しました。

会場には7つテーブルが用意されており、参加者は自由に席に座ります。結果として、1テーブル6~7人の班に分かれました。それぞれのテーブルにコーディネーター(ワークヴィジョンズのスタッフ、または市役所職員)が付き、議論をまとめていきます。私が参加した班は大学生3人(私以外は他の大学)、子供会の女性と小学校勤務の女性事務員、上山青年会議所の男性イベント職員の2人とテーブルコーディネーターでした。

ワークショップの進行はワークビジョンズ代表の西村さんと、駅東プロジェクトの担当者である田村さんが行いました。

今回のワークショップの目的が二つ提示されました。1つ目は、みんながほしい公園の「イメージ(使われ方や雰囲気など)」を検討すること、2つ目は、Aゾーンにおける、公園と緑道の配置を検討することでした。

(2)パブリックマインド

西村さんからは、「パブリックマインド」という考え方の重要性について説明がありました。参加者自身が公園でやりたいことを考えるのはもちろんだけど、パブリックマインド(公共心:みんなのために役立つようなことをやろうとする気持ち)をもって参加することが重要だということです。西村さんは、「自分がやりたいことだが、自分勝手ではいけない。共感の渦を作ることが大事だ」言っています。

(3)駅東エリアのポテンシャル

さらに、駅東エリアのポテンシャルについて、以下の指摘がありました。

  • 駅が近い。新幹線が止まる。
  • 徒歩圏内に小学校と中学校がある。
  • 病院やクリニックが多く、市役所も近い。

生活や子育てに必要なものがそろっているので、今後の戦略として世代のバランスを整えていくことと、温泉のポテンシャルを生かすことが重要だということでした。

(4)実際の取り組み

Aゾーンでは、住宅地の中につくられる公園緑地を先行してデザインし、その公園緑地にあわせて住宅地を計画する予定です。今回のワークショップでは、班のなかで2つのことを行いました。

1つ目は、提示された数枚の公園利用写真から、「こんな公園があったらいい」と思うものに参加者がシールを付けながら、自分の意見を発表していきました。

班のなかでは、「公園でマルシェができる」という写真に対して多くの票が集まりました。次に票が多かったのが、「公園に隣接してカフェや店舗がある」というものでした。

2つ目は、提示されたA案とB案、2つの公園と緑道の配置イメージについて、それぞれ意見、改善点、提案などを付箋に書き起こし、張り付け、発言する作業を行いました。

A案は線路沿いに緑道があるイメージ、B案は緑道が住宅の間を通っているイメージです。

班の意見は、A案は「線路側に緑道があるのが魅力的」といった意見があり、B案は緑道が住宅街にあるため「人の目があり安心」、しかし住宅の一部が線路側に並ぶため「列車の騒音に悩まされる住宅ができてします」という意見がありました。 このような案について、テーブルコーディネーターが「皆さんの様々な意見を率直に聞くことができてとても参考になった」とまとめていました。

第2回パークデザインミーティングの様子
第2回パークデザインミーティングの様子

(5)全体での意見交換

班ごとに話合いをした後は、会場全体で意見交換をし、アイデアを共有するため、班ごとに話し合ったことを発表しました。

「こんな公園があったらいい」については、「公園に隣接したカフェ」や、「マルシェができるところ」、「遊べる空間が欲しい」、「夜も楽しめる場所がいい」というイメージが、会場全体でみると支持されていました。また、公園内には、必ず誰かがいる状況を希望する意見が数多く出されていました。

公園と緑道の配置では、A案の良いところは「新幹線が見えるという強みを生かせる」、「景観が良い」などがあったが、ボール遊びをしているときに、線路にボールが飛び出てしまう場合の心配がありました。B案では、「緑道と住宅をつなげた時に面白いことをイメージしやすい」。しかし「騒音被害があるのではないか」という意見も出ていました。

ここで、参加者のひとりが、「A案とB案、どちらが多いかを知るために、挙手してほしい」と会場に求めましたが、市役所の担当者が「今回はそれはやめましょう」と制止する一幕がありました。制止した理由は、ここで良し悪しを決めるのではなく、純粋に意見を出し合うことが大事だということでした。

最後に、西村さんは「今回のA案とB案は、どちらがよいかというものではなく、どちらの意見も参考にしつつ、ブラッシュアップし、みんなが納得する新しいC案を作りたい」と言っていました。参加者はそれを聞いて、挙手をしなかったことに納得したようでした。

(6)感想

はじめてまちづくりワークショップに参加して、各々考えていることを付箋に書き出すことで、誰か1人の意見だけでなく、全員の意見を聞くことができて、すごく良い発言方法だと感じました。また、少人数グループで進めることで、自分の意見だけでなく他の人の意見を聞き、自分の意見をブラッシュアップすることができるのがすばらしいとおもいました。

現在の長清水公園の面積ではスポーツができず、狭いと感じている人が多かったこと、住宅地が近くにできるのであれば、公園の面積を広げ、子どもが遊べる場所を増やしてほしいという声が多かったことが印象に残っています。

また、住民の方々の意見からは、上山市を盛り上げたいという強い意識から、今回のパークデザインミーティングに参加していることが伝わってきました。