2024年度 明海大学 不動産学部 学生取組成果報告集
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– 52 –1.研究の背景ドローンが測量、報道、農薬散布、競技スポーツ等で注目を集めている。物流問題の解決、建物の維持管理のための活用、空き家の状況把握など、社会問題の解決にも貢献していくと予測する。飛行には無人航空機の安全な飛行のためのガイドラインに基づき国土交通省への申請が必要となるなど、利用のための環境は十分に整備されているとはいえない。2.研究の目的ドローン活用の環境整備の状況、ドローン活用の実態、撮影可能なドローン映像、および、ドローン映像の有用性を明らかにする。3.研究の方法(1)文献調査、(2)ドローン空撮の実証、(3)ヒアリング調査、(4)不動産事業者へのアンケート調査を行った。(1)はドローンの法規制、免許制度、トラブル、活用実態を調べた。(2)は千葉県成田市と大分県玖珠町で実証調査した。(3)は長野県長野市でドローン事業者、大分県日田市で市役所と空き家バンクを利用した物件購入者を対象とした。(4)は全日本不動産協会千葉県本部会員26名を対象に実証映像を元に映像の有用性を訪ねた。4.研究の結果遊休不動産の活用のための不動産情報としてドローンによる映像の有用性は確実に認められる一方、効果については未知な部分があることや情報の生成や活用のための人材が不足しているなどの課題がある。飛行規制や手続きなど、活用の環境整備を進めることも求められる。各調査の結果は以下である。(1)文献調査ドローン(無人航空機)に航空法が適用される。民間資格があったが2022年12月に国家資格制度が開始され、飛行範囲の拡大や、飛行時の国土交通省への申請手間が省略されてビジネスで活用しやすくなった。免許(二等無人航空機操縦士)は実技・筆記試験、書類申請(身体検査)、免許発行の手順があり数か月の期間を要し、普通自動車運転免許と同等の費用を要する。免許取得のハードルは高い。指導教員:中城 康彦      氏名  山野井 千晴類似の紛争事例にGoogle Earthの事案がある。2008年8月に国内12都市でサービス開始したが、40の自治体から法規制を求める要望書が総務省に寄せられた。総務省研究会は、ストリートビューには個人情報保護法の適用はなく、「重大な問題があるとは言い難い」とした。Google社は人の顔にぼかしを入れる等の対応をした。ストリートビューによりプライバシーが侵害され、強迫神経症及び知的障害が悪化して転居を余儀なくされたとして、2010年10月に損害賠償請求訴訟を福岡地裁に提起した事例は最高裁判所まで争われ、原告敗訴した。活用実態に、東日本大震災で被災した福島県南相馬市で、2017年に世界初の完全自律飛行ドローンによる長距離荷物輸送を成功させた、千葉県千葉市内の国家戦略特区で、ドローンによる宅配サービスの実証実験、有明海の海苔の養殖事業で、ドローンで海面を撮影し、病害や赤潮を早期に検知する実証実験がある。ドローン活用の利点として、危険な場所への進入が可能、高画質な写真や映像が撮影可能、安全かつ低コストであることがあり、課題はバッテリーの稼働時間が短い、ドローン運用の環境が未整備、プライバシーに配慮する必要があることが挙げられる。(2)ドローンの空撮実証1)撮影可能性の検討千葉県成田市で、戸建て住宅、小屋2棟、空き家とその敷地を対象にドローン空撮の可能性に係る実証調査を行った(2024年6月8日(土))。実証内容は、事前の準備や手続き、ドローンの操作性、撮影可能な部位と映像の利用可能性などである。成田空港付近のため、空港に事前の連絡・調整・飛行計画の通報を行った。空撮では、木々と電線がドローンと同化してドローンと建物の距離が掴みにくいことが判明した。他方、ドローンの物体感知センサーが木々にも反応して有用性が確認できた。解像度が高い動画・静止画が撮影でき、破損、汚れなどは目視と同等に確認できる。外観、屋根、軒裏、小屋の室内を撮影した。住宅の室内は飛行スペースが足りず、室内飛行と撮影には不向きなことが判明した。遊休不動産の活用に資する不動産情報の映像の有効性に関する研究

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